YAKUDAI WALK 薬大再発見コラム

美白スキンケア商品開発ストーリーー薬学の知識で美と健康をサポートー

薬学部商品開発

2023/05/10

みなさんはじめまして。
新潟薬科大学薬学教育センターの飯村と申します。

薬学部では、高校までで培った化学、物理、生物、数学、国語、英語などの幅広い教科、基礎知識をベースとして、人の命に関わる「薬」の本質を知り、薬を使う人、病気に苦しんでいる人々のニーズを的確にとらえながら、さまざまな知識や情報から最良の医薬品創成を学び、さらに薬剤師としての責任と医療人たる崇高な倫理観をもって、薬を使う患者さんに適切な説明ができるよう正しい知識、コミュニケーションを修得します。

薬学を修めた人は、生命科学や自然科学を基盤とした多彩な分野に精通し、人類の健康、福祉、衛生及び健全な社会環境の保全と向上に貢献できる総合力を身に着けることができます。

薬学の学びと化粧品のつながり

薬学部では学年進行に伴って基礎薬学、医療・衛生薬学と段階的に専門性を高めていきます。

その過程で薬の製造・加工技術、皮膚科学、物理化学、界面化学、油脂化学、レオロジー、毒性学、微生物学、分析化学等々などの幅広い知識や技術を学びます。

これらの学びは「化粧品開発・製造」にも応用・利用されます。
化粧品は、薬学部で修得する学問、技術の調和と総合化によって生まれるものでもあるため、「化粧品」と「薬学部での学び」はとても深い関係にあります。

現代社会において化粧品は人の心や体に働きかけ、人々が健康で文化的な生活を営む上で必要不可欠なものとなっています。
そして保健衛生上影響を及ぼすこともあるため、医薬品などと共に法律（医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律）によって規制され、その品質、有効性および安全性が確保されています。

この法律についても薬学部で学ぶことから、薬学を学んだ薬剤師が扱うことで消費者の安心と安全が守ることができます。

新潟薬科大学の学びと化粧品の関係

新潟薬科大学薬学部にはさらに深く化粧品に関する内容を学ぶことができる「香粧品の科学」という科目が用意されています。

薬学を学ぶことと同時に、「香粧品の科学」という科目の中で、化粧品に関する深い知識や技術を修得すれば、さらに幅広い様々なフィールドで活躍できる「薬剤師」に成長していけと思います。

美白化粧品”Snow intensive stick”開発ストーリー

私は洗浄、分散、乳化、可溶化等多様な作用を持ち、薬物安定化、溶解性の改善等々の目的で広く製薬や化粧品、食品製造に至るまで使用される両親媒性物質の様々なユニークな挙動に興味をもち、その特性や薬物との相互作用について分子レベルで解明を行ってきました。

ある時、その両親媒性物質のmicelle溶液（両親媒性物質の水溶液中の分子会合）から両親媒性物質と薬物間に形成される結晶性の分子複合体を世界に先駆けて発見し、それらの分子配列、分子複合体形成メカニズムについてＸ線を用いて明らかにすることを成功させました。

さらに、それら分子複合体の物性、特性についても詳細に検討を重ねた結果、様々な薬物が両親媒性物質と分子複合体を形成することで、難水溶性薬物の水に対する溶解性が改善されることを発見しました。
また熱、光、酸素等に不安定な薬物との形成では、それらの安定性の向上につながることを見つけ、「薬物の界面活性剤との分子複合体化」は、本来薬物単体が有する性質に新しい機能を付加できることを提案し、分子複合体の製造特許（特許第3900237号）を取得しました。
このような特徴をもつ分子複合体を製薬に応用できれば、難治性疾患に苦しむ患者さんを救うことができるのでは。。。
という思いから、新規の「色素沈着治療薬の開発」に着手しました。

そして、これまでにない有用性高く、副作用の少ない色素沈着治療薬の開発に成功し、2つ目の特許（特許第3712066号）を取得することに成功しました。
この治療薬は先ず、院内製剤、病院製剤として皮膚科、美容形成外科、産婦人科等の臨床現場において使用され、多くの色素沈着症の患者さんの症状回復に貢献しました。

左写真は、美白剤は無添加なので、メラニン形成による黒化がみられる。右写真は、今回開発した美白剤を添加しており、メラニン形成が良く抑えられていることがわかる。

その後、この新しい色素沈着症に有効な美白成分（特許品）は、化粧品、美容関係者に注目されるようになり、化粧品会社（PAPパザパ株式会社）との共同開発により、シミに作用し、白い美肌を目指し安心安全を追求した「Snow　intensive stick　light」及び「Snow　intensive stick　pearl」という美白スキンケア化粧品として発売が実現しました。

今回の実用化では、「色素沈着症」に悩む患者を救うことはもちろん、美容における人々の永遠のテーマといっても過言ではない「シミを安全に消す」という期待にも応えられる研究成果になったと思います。