YAKUDAI WALK 薬大再発見コラム

-薬物乱用-市販薬のオーバードーズの危険性について

薬学部
2022/10/31

みなさんこんにちは。

新潟薬科大学の城田です。

今回は、社会問題としても度々取り上げられている市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)の危険性についてお話しさせていただきます。

まず、「オーバードーズ」とは、薬物を過剰に摂取することを意味しており、「OD」とも呼ばれています。近年、市販薬をオーバードーズ(=薬物乱用)する若い世代が増加しており社会問題化しています。

市販薬のオーバードーズは何が問題なのか?

薬には、治療の目的にかなう作用(主作用)とそれ以外の作用(副作用)が必ず存在しています。
「クスリ」を逆から読むと「リスク」と読めますが、副作用のない薬は1つもありません。

よって、薬の副作用を抑え、効果を最大限に引き出す為に、全ての薬には、用法や用量が定められています。

もし、本来の目的とは異なる用法で服用したり、過剰量の摂取を継続してしまうと、副作用による身体への悪影響が懸念される上、依存症になってしまうケースもあります。
一度、依存症になってしまえば、急に薬の服用を中止、又は、減量しても、吐気、嘔吐、手の震え、幻覚、イライラする、落ち着かない等の“離脱症状”と呼ばれる症状があらわれることがあり、この離脱症状の苦痛を和らげる為に、また薬を服用してしまうという悪循環に陥ることがあります。

ここで、市販薬は、「薬局やドラッグストアで医師の処方せんが無くても購入できるのに、本当に依存症になるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この市販薬でも正しい用法用量で服用しなければ、十分に依存症に陥ってしまう可能性がある上、最悪の場合、死に至るケースもあります。
したがって、市販薬のオーバードーズは、当然、危険な行為と言えます。

市販薬をオーバードーズしてしまう動機と対策

なぜ市販薬をオーバードーズしてしまうのでしょうか?

一概には言えませんが、不安や葛藤、憂鬱な気分を和らげたいなど、精神的な苦痛から逃れる為に薬をオーバードーズしてしまうケースが多いとされています。

家族や学校など、周囲に相談することができないほどの深刻な悩みを1人で抱えてしまい、これらを乗り越えるために市販薬をオーバードーズしてしまうケースも多いといわれています。

したがって、多くの乱用者は、心に深い悩みを抱えていているという現状があります。

身近な人が市販薬の依存症に陥ってしまったら?

家族や友人など身近な人が市販薬の依存症に陥ってしまったら、周囲の方々は、どのように対応したら良いのでしょうか?

こちらも一概には言えませんが、多くの乱用者は、深刻な悩みを抱えているケースが多く、この苦しみを和らげる為に市販薬をオーバードーズするという背景があります。
よって、少なくとも、周囲の方々が乱用者に対して、オーバードーズをした行為自体を叱ったり責めたりするのでは根本的な解決にはなりません。

すなわち、市販薬のオーバードーズを止めさせる為には、
「ダメ。ゼッタイ。」だけでは「ダメ。」なのです。

市販薬のオーバードーズを根本的に解決する為には、まずは、
周囲の方々が、乱用の動機となっている悩みや問題に一緒に向き合うことが大切です。
その為には、周囲の方々が、正しい知識や対処方法を身に着けることも重要となります。

一方、周囲の方々が乱用者のオーバードーズに気付くことも、なかなか難しく、気付いた頃には、既に依存症の状態に陥ってしまっている場合も多いとされています。

このような場合は、例えば、乱用者の家族内だけで解決を目指すのではなく、早めに、医師や薬剤師等の専門家や、精神保健福祉センターや保健所など公的な相談機関に相談することを強くお勧めします。

健康で明るく長生きできる社会を目指して

薬は、本来、人々が健康で明るく長生きする為に使用されるべきものです。
ところが、これから社会を担う若い世代が、深い悩みを抱え、それらから逃れるために市販薬のオーバードーズ等により健康を損ない、薬の依存症等に苦しんでいる現状は、非常に残念なことであります。

また、同時に、少子高齢化が進む日本においては、深刻な問題として存在しています。

若い世代による市販薬のオーバードーズを無くす為には、彼らが抱えている深い悩みなどに、家族、専門家、教育機関、医療機関、公的な相談機関などが連携して、社会全体で対応することも重要ですし、そもそも、若い世代に、医薬品の適正使用の大切さを継続してアナウンスし理解させ、これらについて自身で考える機会を設けることも大切だと考えます。

 

薬物乱用防止のための出張講演受付中!

本学ではこれらの社会的な背景を通して医薬品のオーバードーズや薬物乱用の危険性やお薬そのもののリテラシーを高めてもらうための出張講義を実施させていただいております。

 

講義では、一方的にこれらの危険性をアナウンスするのではなく、受講者のみなさんに、なぜお薬は正しい用法用量で服用しなければならないのか?なぜ薬物乱用はやってはならないことなのか?医薬品のオーバードーズや薬物乱用が、将来の夢や目標の実現に必要な事なのか等を考え、これらの行為が自身の将来にとって無意味な行為であることに、自身で「気付いて」いただくことを目標として講義を行います。

講義の内容としては実験やクイズ等も交えながら、受講者参加型の講義を心がけておりますので、お気軽にお申し込みください。

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【対象講座名称】
・薬物乱用は「ダメ。ゼッタイ。」
【講座概要】
薬物乱用が将来の目標を達成する為に、いかに無意味な行為であるのかを
認識し、「前向きな思考」で薬物に手を出さない意識を持っていただく事を目
指して講義を行います。また、ご希望があれば、薬物乱用防止教育の一環と
して、お薬の正しい服用方法等についても講義します。
講義内容につきましては、可能な限り御要望に対応させていただきますので、
お気軽に御相談ください。
※幼稚園児・小・中学生にも対応可能です。(対象者の年齢に応じて内容
を変えております。)
【担当】
城田起郎 先生

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この記事を書いた人

城田 起郎

新潟薬科大学 薬学部