研究室紹介

物理薬剤学研究室

両親媒性物質のユニークな利用・応用によって新しい医薬品や香粧品を生みだし、医療や美容の現場に貢献!

「くすり」は、人体に取り込まれた後、きちんと作用して効果を発現し、病気を治し、もとの健康な状態に戻してくれることが期待されます。しかし、その形状が複雑で、使いにくく、さらに安全性の保証がなかったら、私たちは安心してくすりを使うことができるでしょうか?
「くすり」は、高い有効性に加え、副作用が非常に少なく工夫され、それを使用する患者さんに配慮した好ましい形、好ましい使い方ができるようにつくられていることが大切です。

患者さんのことを考え、配慮した「くすり」とはどのようなものなのでしょうか?

「くすり」は、効果を発現させたい所に、時間通り、目的とする量が届くようにつくられていることはもちろんですが、図1に示すように適用する部位によって使用しやすい形になっていて、さらに患者さんに「痛い!」思いや「苦しい!」思いをさせない簡単で便利な形になっている工夫が必要です。そしてその医薬品の安定性も保証されていることが重要です。このようなことから近年、投与部位として「皮膚」が注目されています。皮膚に適用するくすりには、貼付剤(皮膚に貼って用いる)や塗布剤(軟膏剤やクリーム剤)が知られています。皮膚に適用するくすりは、あまり痛みを伴うこともなく、またくすりを中止したい時は皮膚から剥がしてしまえば良いので比較的便利です。 私たちの研究室では、安定性や吸収性に優れ、効果を十分に発揮できる「くすり」をつくるため、両親媒性物質との分子複合体化という少しユニークな技術(特許取得)を導入して、主に皮膚に適用するくすりや化粧品の開発を行っています。


研究概要

私たちの体は数多くの細胞から成り立っています。その1つ1つの細胞を外界と仕切る役割を担っているのが「生体膜」といわれる細胞膜です。この生体膜の主な成分はリン脂質です。リン脂質は1つの分子内に水と親和性の高い部分(親水部)と低い部分(疎水部)、すなわち相反する性質を持った「両親媒性物質」です(図2)。このような構造を持つ物質は他にも、私たちの身近にある洗剤等の中に配合されている「界面活性剤」があります。

私たちの研究室では、「両親媒性物質」と様々な薬物(薬効を示す成分)が相互作用し、両者間に結晶性の分子複合体が形成されることを発見しました(写真1)。そして両親媒性物質と分子複合体化された薬物は、もし酸素や光に不安定な性質を持つ薬物であった場合には安定化され、水に溶けにくい性質を持つ場合には溶解性を増大させることでき、さらには独特なにおいを持ち飲みにくいことが推測される場合にはそのマスキングができるなど、それまでに薬物が持っていなかった(むしろ薬物の問題点とされていた)数々の新しい性質を付加できることがわかりました(図3)。現在は、この方法・技術(特許取得)を利用して、特に皮膚に適用されるくすりや化粧品の研究開発を行っています(写真2、図4)。

教員紹介

飯村 菜穂子(イイムラ ナホコ)
准教授
学位:博士(理学)

薬学部において、物理薬剤学、製剤学を担当しています。私たちが使う医薬品は、通常、原薬をただそのまま投与することはあまりなく、錠剤、カプセル剤、注射剤、軟膏剤などのように投与される「製剤」という形に加工されて適用されます。物理薬剤学、製剤学は、医薬品をいかに有効で安全性の高い製剤にするかを考え、研究する薬学ならではの学問領域です。これからの社会・医療ニーズに応え、貢献できる製剤の開発を一緒にめざしてみませんか?もし研究室に興味があれば、物理薬剤学研究室のホームページをのぞいてみてください。

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