YAKUDAI WALK 薬大再発見コラム

大麻グミなどのTHCアナログを含む製品の危険性について

薬学部
2023/11/17

みなさんこんにちは。
新潟薬科大学薬学部の城田です。

今回は、ニュースでも多く取り上げられて社会問題となっている大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の化学構造を一部改変した危険ドラッグであるHHCHなどのTHCアナログについてお話しします。

今流行りの危険ドラッグ、THCアナログとは?

まずはじめに、危険ドラッグとは、規制成分である麻薬や覚せい剤、大麻の化学構造を一部変えただけの薬物全般のことを指します。
化学構造を一部変えることで法規制を逃れる場合もありますが、身体への影響は、麻薬や覚せい剤、大麻などよりも深刻な場合も多く、大変危険な薬物です。
そして、最近流行っている危険ドラッグの1つに、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の化学構造を一部改変した危険ドラッグ、「THCアナログ」があります。

実際、厚生労働省はこのTHCアナログに該当する複数の成分を対象に、動物実験などを行った結果、THCと同等かそれ以上の危険性を確認しています。

また、最近では、THCアナログを含むグミ(通称:大麻グミ)などの食品等を摂取した後に救急搬送されるなどの事例が相次いで報告されています。

THCアナログを含んだグミなどの製品は、なぜ危険なのか?

THCアナログを含んだグミ(通称:大麻グミ)などの製品が危険な理由はいろいろとありますが、先に記述した通り、まずは、THCアナログを含んだグミなどの製品は、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の化学構造を一部改変した成分を含んでいますので、その時点で危険です。

また、日本国内で流通している正規ルートで製造販売されている全ての医薬品は、国の厳しい基準をクリアし、錠剤1錠1錠に含まれる有効成分の量が一定になるよう均一性が保たれています。

しかしながら、違法業者により製造されたTHCアナログを含んだ製品は、正規医薬品と比較すると、製品の1つ1つの成分量の均一性が保たれていない可能性が極めて高く、例えば、同じ人が同じパッケージに入ったTHCアナログを含んだグミ(通称:大麻グミ)を食べる場合でも、食べたグミによってTHCアナログの含有量が異なり、身体への影響にも大きなばらつきが生じることが予想され、その点でも危険と言えます。

THCアナログを含む製品を所持していたら違法か?

THCアナログの多くは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により「指定薬物」として指定されており、医療等の用途以外の用途で製造、輸入、販売等が禁止されているほか、個人で所持、使用している場合も取り締まりの対象です。
したがって、購入者個人であっても、「指定薬物」に指定されたTHCアナログを含んだ製品を所持したり、使用した場合は、「違法行為」となります。

このような背景から、危険ドラッグの販売業者は、自身が販売している製品に含まれるTHCアナログが「指定薬物」に指定されると、たとえば、「〇月△日に、◎◎◎◎(THCアナログの名称)が規制対象となります。
この成分を含む製品をお持ちの方は、〇月△日の前日までにご自身で廃棄をお願いします。」とSNSなどに投稿します。
そして、その製品の代わりとなる、つまり、指定薬物に指定されていないTHCアナログを含んだ製品を販売していくのです。

一方、薬機法の指定薬物に指定されていないTHCアナログを含んだ製品を、購入者が所持・使用することまでは、取り締まることが難しいのが現状です。
しかしながら、一部の販売業者は、THCアナログを含んだ製品を合法と称して販売しているようですが、販売業者自体を取締ることは可能です。

薬機法では、「医薬品」の定義の1つに「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの」とあります。

したがって、THCアナログを含んだ製品をこのような目的で販売していた場合は、国の承認を受けていない医薬品で、かつ、医薬品の製造を許可された業者で製造されたものでもない医薬品、すなわち「無承認無許可医薬品」を販売したという解釈となり、販売業者は、薬機法違反として処罰される可能性が高いのです。

さらには、医薬品販売業等の許可を受けずに医薬品を販売したという解釈、「無承認無許可医薬品」を広告したという解釈でも取締りが可能です。

「T」、「H」、「C」という文字で構成された成分を含む製品の多くは危険ドラッグ/「HHCH」を含む製品も危険ドラッグ

THCアナログには、THCH、HHC、THCP、THCV、THCB、HHCOなどと呼ばれる成分が該当します。ここで着目したいのは、これらの成分の名称に、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の「T」、「H」、「C」という文字が入っているということです。

最近流行している大麻グミに含まれるTHCアナログのHHCHは、化学構造がTHCに似た成分であり、当然「危険ドラッグ」に該当します。そして、このHHCHも、やはり「H」と「C」という文字で構成されています。

先に記述したように、THCアナログは、大麻の有害成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の化学構造を一部改変した危険ドラッグ全般を指しますので、THCアナログには、非常に多くの化学物質が該当することとなり、また、現在、在庫が存在しない化学物質であっても、将来的にどこかで製造される可能性が十分にあります。

現状では、実際にネットや実店舗で販売されているTHCアナログを含む製品も数多く存在する為、個人的には、THCアナログを含む製品を「危険ドラッグ」とは知らずに購入してしまう方も少なくないのではと推測しています。
今後もいろいろな名称のTHCアナログが出回る可能性がありますので、「T」、「H」、「C」という文字で構成された名称の製品の多くは「危険ドラッグ」だと認識し、このような製品には絶対に手を出さないようにすることが重要です。

 

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この記事を書いた人

城田 起郎

新潟薬科大学 薬学部 元薬事監視員