研究室紹介

小瀬 知洋 研究室 環境ビジネス分野

環境を守り、育む技術を活かすためのビジネスを創り出す

本研究室では応用生命科学科の環境工学研究室を始めとする環境分野の研究室が持つ「環境を守り、育む技術」シーズをビジネスとして社会に提供することを目指し、新たな環境ビジネスの創出を目指しています。
公害などの環境汚染とその対策が重要視されていた時代、企業の環境部門は法律を守るためにただコストがかかるだけの部門で生産に寄与することは少なく、会社にとってはお荷物でした。しかしながら、昨今の環境分野ではE-wasteからのレアメタル抽出や、海水淡水化などの水ビジネスなど無から有を創り出すような新たなビジネスが生まれています。また農業や食品産業をはじめとする様々な産業を支える根本である綺麗な水と空気を守っているのも環境産業で、これらは言わばあらゆる産業分野を支える重要なインフラストラクチャーでもあります。
本研究室では、これらを通じて「生命産業」を支える研究を行っています。


研究概要

小瀬研究室では農業や食品産業などの生命産業をはじめとする多様な産業を支える環境技術の実用化のための研究を行っています。

農業から環境を守る

意外な話ですが農業は大量の水を使い、屋外で有害な化学物質である「農薬」や、水質を汚染し富栄養化を引き起こす「肥料」を大量に使う環境負荷の極めて多い産業です。富栄養化の原因物質であるリンの水系への負荷量で比較すると農業は下水の凡そ倍の環境負荷を生じています。応用生命科学部環境工学研究室が開発した一次産業廃棄物であるもみ殻とカキ殻をリサイクルしたもみ殻燻炭を用いて水田からのリン負荷を抑制する技術のビジネス化を目指したコスト評価を行っており、この技術によって最大で水田10aあたり7320円のコスト改善効果が期待できることが明らかになりました。

ゴミを宝に変える

E-wasteと呼ばれる電気製品の廃棄物は様々な化学物質や重金属を含む有害な廃棄物として長く問題になってきました。昨今このE-wasteに含まれる貴金属やレアメタルを抽出して資源に変える技術が開発され注目されています。しかしながら、電気製品の多くはこのようなリサイクルを前提とした改修が行われておらず資源として有効利用されていない実態があります。このような廃家電製品のうち、英サイクル効率の高い製品を見出すために様々な製品のリサイクルによって回収しうる貴金属やレアメタルの量を評価しています。
その結果、家庭用ゲーム機をリサイクルすることで、その資源的価値が評価され回収スキームの整備が行われている携帯電話と同レベルの貴金属やレアメタルの回収化可能であり、その経済的価値は180億円におよぶことがあきらかになりました。

水道事業民営化・・・本当に必要?

世界では上下水道事業の合理化とコスト削減のために民営化が進められており、わが国でも一部の自治体で民営化が進められています。民営化や事業体統合はコスト削減効果が期待できる一方で、海外ではサービス低下が生じたい例も報告されており、その有効性は明らかになっていません。当研究室では上下水道事業の事業体統合や民営化が水道両人にどのような影響を及ぼすかの評価を行っています。
その結果、現時点では民営化に水道料金を下げる効果は見られず、事業体統合は給水人口が30万人程度になるまで事業体を集約することで水道料金を低下させる効果が期待できることが明らかになりました。

教員紹介

小瀬 知洋(コセ トモヒロ)
教授
学位:博士(工学)

先生からのメッセージ

環境分野は食品産業などと異なり、生活に直接かかわることが少ないため「判りにくい産業」ですが、水道産業を代表されるようにすべての産業にかかわりのある社会インフラ産業です。水を使わない、空気を吸わない、ゴミを出さない生活があり得ないことからもそれは分かると思います。
小瀬研究室では、すべての産業を支える環境産業について学び、持続可能な社会の実現の一助になることを目指しています。