新潟薬科大学

薬学部 研究室紹介

衛生化学研究室

化学療法剤の開発を目指す

人の命を守る化学という意味の「衛生化学」は、日本の薬学の黎明期から存在する研究分野で、食品・環境汚染物質や病原体から人間を守る研究で社会に貢献してきました。科学技術の進歩に伴い、生命現象を物理や化学の言葉で理解し、人類の特徴や個々人の特性を遺伝子レベルで解析することが可能になってきていますが、衛生化学はこのような現代科学の成果を基盤とし、人体と外部環境との相互作用を幅広く研究する学問分野になっています。
このように幅広い研究領域のうち、衛生化学研究室の准教授の安藤は物理化学的手法を用いて生体内物質の動態研究を、助教の冨塚はヒト体内における脂質代謝やエネルギー代謝について、またそれらの腸内細菌叢との相互作用についての研究を行っています。


研究概要

物理化学的手法による生体内物質の動態研究(安藤)

脂質の消化吸収に重要な役割を持つ胆汁酸は、体内でコレステロールから生合成されるステロイド骨格を有する化合物であり、肝臓や腸内細菌叢で代謝されて非常に多数の化学種に変化し、脂質代謝のシグナル分子として機能することにより恒常性維持に重要な役割を演じています。従来、胆汁酸は肝臓と腸管に局在するとされてきましたが、生体内胆汁酸の一斉高感度分析法を開発して探索したところ、ラット脳内に高濃度の胆汁酸が存在することを世界で初めて明らかにしました。脳内胆汁酸の生理的な意義はまだ不明ですが、細胞レベルではほとんど分裂や再生せずに長期間恒常性を維持している脳組織が、非常に高速で高度な情報処理を行うことが出来るという脳の特殊性に、特異な平面状界面活性分子である胆汁酸が関与しているのではないかと想像をたくましくしています。
現在、衛生化学研究室ではステロイド系化合物の合成研究や分析法の開発は行っていませんが、クロマトグラフィーや質量分析法を駆使し、食品成分の体内動態や生体分子との反応性の研究を行っています。衛生化学の講義からは直接には想像できない内容かもしれませんので、研究室配属前にはぜひ研究室に見学に来てください。


低栄養下における代謝変化と適応機序の解析(冨塚)

1.がん微小環境下におけるがんの代謝
がん組織では血流不足により低酸素・低栄養の部位が生じる。そのようながん微小環境下、低酸素・低栄養部位のがん組織は、既存のがん化学療法における薬剤耐性や放射線治療における放射線耐性が生じることから、新規のがん治療法の開発が望まれる。そして、がん微小環境下のがん細胞は、一般的ながんで生じるといわれる解糖系の亢進でない機序でエネルギーを得て生存している。そこで、新たな抗がん剤のターゲットとして、がん微小環境特異的なエネルギー代謝系であるNADH-フマル酸還元系について研究を行っている(実験医学, 35, 1625-1632, 2017)
2.低栄養、特にタンパク質摂取欠乏下における代謝変化とその適応 (東大・医 梅崎教授らとの共同研究)
世界では、三大栄養素のひとつであるタンパク質の摂取が著しく不足している地域が多く存在している。その中で、タンパク質摂取量が著しく不足しているにも関わらず、健康状態を維持できる人々の低タンパク質適応能、代謝変化をモデルマウスや培養細胞を用いて解析し、低タンパク症の予防・治療法の開発を目指している(Metabolomics, 13, 105, 2017)。

教員紹介

安藤 昌幸(アンドウ マサユキ)
准教授
学位:博士(薬学)

衛生分野担当科目:地球・生活環境と健康(2年次)、化学物質と毒性 (乱用薬物・電離放射線)(3年次)、スポーツ薬学(4年次)、医療現場で役立つ衛生薬学(5年次)

冨塚 江利子(トミツカ エリコ)
助教
学位:博士(薬学)、博士(保健学)

衛生分野担当科目:栄養の摂取と代謝(2年次)、化学物質と毒性(代謝・がん・毒性・中毒処置)(3年次)、医療現場で役立つ衛生薬学(5年次)

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