研究室紹介

教育学研究室

個人と社会をつなぐシティズンシップをどのように育むか

理科教職コースの中で、教科指導(授業)に加えて、教科外の指導を研究対象としているところに特徴がある研究室です。具体的には生活指導、学級づくり、学校行事、部活動、教員同士・保護者との協働など、学校現場で進行している教育事象からテーマを立ち上げ、フィールド(教室他)での観察、インタビューなどでデータを集めて、実践的な研究を行っています。 

研究室の開設以来、既に15名を超える卒業生が正規採用になり、小・中・高の教壇に立って活躍しています。そうした卒業生と卒研中間発表会で交流したり、研究上の協力/アドバイスを受けたりすることができるのも、本研究室の大きな特色です。

研究概要

シティズンシップ(市民性)とは、一般的には「よりよい社会の実現のために、まわりの人と積極的に関わろうとする意欲や行動力」とされてきました。しかし社会がかつてないスピードで変動する今日、「よりよい社会」のイメージは一人ひとりで大きく異なっています。また従来、所与のもので不変とされてきた国、民族、家族など集団の枠組自体が流動化、多様化しつつあります。

 このような状況下で、学校は子どもたちにどのようなシティズンシップを育めばいいのでしょうか。多様化が進む社会の中で、他者と平和的な関係を築く力、協働して物事に取り組む力をどう培えばいいのでしょうか。より根本的には、他者に働きかける基盤となる自己の安心感やアイデンティティをどう確立すればいいのでしょうか。

 こうした問題意識に立って、今日の中等教育における教科指導・教科外指導のあり方を再検討することが全体を貫く大きなテーマです。その検討のために、子どもたちの関係性が変容する場面やそれをもたらした指導、活動のあり方に注目しています。これまで取り組まれた研究課題としては「生徒の多様性や特別なニーズをふまえた学級づくり」「生徒同士の関係を豊かにする特別活動のあり方」「部活動における自主性の考察」などが挙げられます。更に指導を行う教師自身の主体性の危機が叫ばれる中、「若手教員の働き方に関する考察」もテーマとして取り上げています。

教員紹介

木村 哲郎(キムラ テツロウ)
教授
学位:修士(教育学)

3年生後期に研究室での演習が始まると、質的研究をメインとするアプローチに最初は戸惑う人も多いようです。しかし具体的な事例等の分析を重ねる中で、次第にその面白さを実感し、その人にしか書けない力のこもった卒業論文を仕上げていく場面に数多く立ち会ってきました。一見ネガティブに感じられる子どもたちの言葉・行動の意味を探ったり、その背景となる関係性や指導のあり方を考察したりすることは、どんな教師として子どもの前に立とうとするのかを問い、そのための実践力をつける貴重なトレーニングだと考えています。一緒にトライしましょう!