研究室紹介

酵素工学研究室

タンパク質の触媒機能の追求

私たちの細胞では、様々な機能を持ったタンパク質が働いています。その機能は、化学反応の触媒、細胞の構造維持、物質の輸送・貯蔵、シグナル伝達、外部刺激に対するセンサー、遺伝子調節など、非常に多様です。これらの機能を発揮するために、多くのタンパク質は決まった形(立体構造)を取り、その構造は機能と密接に関係しています。私たちの研究室では、タンパク質の形(立体構造)を解析することを通し、タンパク質分子の機能の解明、改良、利用を目指します。


研究概要

β-ラクタマーゼの構造と基質特異性
抗生物質は細菌による感染症に有効な薬剤として広く使用されています。β-ラクタム剤はペニシリンに代表される抗生物質の一種で、細胞壁合成酵素を阻害することで、細菌の増殖を妨げます。しかし、薬剤の使用に伴ってβ-ラクタム剤が効かない薬剤耐性菌が出現しており、これらの多くはβ-ラクタム剤分解酵素(β-ラクタマーゼ)を生産します。私たちは、β-ラクタム剤投与患者から単離された菌が生産するβ-ラクタマーゼを対象とし、X線結晶構造解析、基質特異性解析、熱安定性-薬剤耐性の相関解析を行うことで、酵素の薬剤分解メカニズムの解明と、新規阻害剤のドラッグデザインへの応用を目指しています。

PET分解酵素の研究
環境中におけるプラスチックの蓄積は大きな社会問題となっており、生態系への影響が懸念されています。多くの研究グループによってプラスチック分解微生物の探索が行われていますが、環境中のプラスチックを十分な効率で処理できるシステムは実現しておらず、この環境問題を解決には至っていません。
ペットボトルなどで広く使用される難分解性プラスチックpolyethylene terephthalate(PET)を加水分解する微生物は、PET分解酵素を生産することが報告されており、今までに報告された酵素の多くはクチナーゼ(EC 3.1.1.74)に分類されます。本研究ではクチナーゼを遺伝的に改変してPET分解を試みます。

教員紹介

井深 章子(イブカ アキコ)
教授
学位:博士(農学)
研究分野:酵素学、構造生物学(酵素の機能-構造の解明)

一見すると複雑な立体構造は、タンパク質分子が機能を発揮するためには必然であり、ある種の機能美をもっています。タンパク質の構造・機能の奥深さを楽しみながら、日々研究に取り組んでいます。

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