新潟薬科大学

応用生命科学部 研究室紹介

食品安全学研究室

食品安全と細菌の走化性

食中毒を起こさないためにはどのように食品を製造したらよいのか、特に微生物による食中毒の防止に向けた研究を行っています。加熱がいちばん簡単な殺菌方法ですが、日本食は加熱しないものが多く、加熱する場合も、最低限にしたほうが肉や魚は美味しさが増します。実際に微生物を培養してその特性を見極めること、および食品の品質を落とさない殺滅の方法を開発するのが一つの方向性です。もう一つの方向性として、病原細菌の環境応答と病原性との関連性をつきとめるため、食中毒細菌の走化性のメカニズムを解明するための研究にも従事しています。


研究概要

具体的な研究は、食中毒の中でいちばん患者数が多いノロウイルスと致死率が高いボツリヌス菌をおもな対象としています。
ノロウイルスは消毒剤に強く、次亜塩素酸(ハイター)では100ppmの濃度が必要を言われていました。これは手が荒れるほどの濃度で、常識的ではありません。しかしそれを主張する論文が元になっていました。私達はその実験方法を見直し、有機物を除去した状態であれば、1ppmで十分であることを明らかにしました。そうでなければ、最大でも数ppmしか次亜塩素酸を加えないプールで、大規模感染がたくさん起こるはずです。その後、企業との共同研究でノロウイルスに有効な消毒剤の開発を進めています。
細菌の中には胞子をつくり、100℃で煮ても死なないしぶといヤツがいます。食中毒を起こすボツリヌス菌はその代表で、病原菌の中では最も耐熱性が高く、殺滅には120℃で3分の加熱が必要です。そんなしぶといヤツを効率よく殺す方法を、食品中の成分を使ったり、超高圧(数万メートルの水深の圧力に相当する)で処理したりしながら、模索しています。
当研究室のもう一つのテーマである細菌走化性について以下に説明します。運動性のある細菌はアミノ酸や糖などの栄養物質に近寄っていき、重金属イオンやフェノールなどの有害物質からは遠ざかる「走化性」を示します。細菌細胞を1つの分子機械として捉えるなら、この走化性は1)。 センサーによる刺激受容(シグナル入力)、2)。細胞内へのシグナル伝達及び統合(情報処理)、3)。運動器官であるべん毛の回転方向制御(応答出力)というたった3つのステップで説明されます。作動原理はシンプルでありながら実に奥深いこの「細菌走化性」(bacterial chemotaxis)の精妙さは驚くべきものがあります。細菌走化性は彼らの生存戦略に重要であるばかりでなく、病原細菌の場合、その病原性にも密接に関連します。そこで現在はコレラ菌やクロストリジウム属細菌など、食中毒を引き起こす細菌の走化性について、センサーにあたる走化性受容体を中心に研究を行っています。

ノロウイルス用消毒剤の有効性試験

ヒトと細菌の感覚比較

教員紹介

浦上 弘(ウラカミ ヒロシ)
教授
学位:理学博士
重松 亨(シゲマツ トオル)
教授
学位:博士(農学)
西山 宗一郎 (ニシヤマ ソウイチロウ)
准教授
学位:博士(理学)

先生からのメッセージ

食品を安全にするには、缶詰並みに加熱するのがいちばんです。缶詰は、ナポレオンが軍隊を率いて遠征するときのために開発させた加工方法です。缶詰の加熱条件は、ボツリヌス菌を殺す120℃、3分です。しかしこれでは、美味しいものは食べられません。応用科学は、美味しさと安全の両立を目指します。
学生の学修・研究については、私たちは一人一人の個性に合わせて丁寧に指導を行います。様々な技能・資格の習得・取得機会もあります。積極的に行動してどんどん自分の能力を伸ばしていきましょう。


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