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世界初となるソバの全ゲノム解読に成功

トピックス
2016/04/11

本学応用生命科学部植物細胞工学研究室は、京都大学、石川県立大学、公益財団法人かずさDNA研究所及び国立研究開発法人農研機構と共同でソバの全ゲノム(生物の設計図)を解読し、その研究成果を国際科学専門誌「DNA Research」に発表しました。なお、このニュースは、3月31日の新潟日報朝刊にも取り上げられました。

研究の内容と成果

ソバは中国原産の植物ですが、今では蕎麦粉を原料とした麺(蕎麦切)は世界へ和食文化を発信する食材のひとつにも数えられるほど親しまれています。ソバの子実はビタミン、ミネラル、食物繊維等に富み、栄養面からも重要な作物として知られています。

ソバの育種ではプロアントシアニジン1)やデンプンなどの品質改良、およびアレルゲン性2)や収量安定性に関わる自家不和合性3)形質の除去が重要項目として挙げられます。しかし、ソバが属するタデ科植物のゲノム配列はこれまでに公開されておらず、ソバの育種に利用できるゲノム情報はありませんでした。そこで、本学植物細胞工学研究室らの研究グループは、これらの農業的に重要な形質を含む、様々な形質に関わる遺伝情報を一挙に明らかにすることを目的として、生物の設計図であるゲノムの解読に臨みました。

今回、ソバの全ゲノムの配列を解読するとともに、約3 万6 千個の遺伝子の機能が推定できました。その結果、アナフィラキシーショック4)に関連するFag e 2タンパク質5)をコードする遺伝子とその他のアレルゲン性が予測される遺伝子がゲノム中の特定個所に集中して存在することを発見しました。またソバ麺に新たな食感を与えると予想されるモチ性に関わる遺伝子、蕎麦粉の品質に関連するプロアントシアニジン合成に関わる遺伝子および自家不和合性を制御すると推定される遺伝子など、ソバの育種に極めて重要な遺伝子を一挙に明らかにすることができました。

今後の展開

今回の結果は低アレルゲン性、難褐変性、モチ性、自殖性などの有用な特性を持ったソバの品種開発の加速化につながります。さらに今回構築したソバのゲノムデータベース(Buckwheat Genome DataBase, BGDB;http://buckwheat.kazusa.or.jp)を活用して他の植物で既知の有用遺伝子を検索し、また得られたゲノム配列情報をもとにして未解明の遺伝子を同定することにより、既存のソバの品質をより向上させることができると期待されます。

論文タイトルと著者

“Assembly of the draft genome of buckwheat and its applications in identifying agronomically useful genes” DNA Research, 30 March 2016
Yasuo Yasui, Hideki Hirakawa, Mariko Ueno, Katsuhiro Matsui, Tomoyuki Katsube-Tanaka, Soo Jung Yang, Jotaro Aii, Shingo Sato and Masashi Mori

用語解説

1)プロアントシアニジン
ポリフェノールの一種

2)アレルゲン性
アレルギーを誘発する性質

3)自家不和合性
ある種の植物が自己の花粉では受粉しない性質で、植物としては遺伝的多様性を保持するのに有利な性質であっても、作物としては有用な形質を固定するのに不利な性質

4)アナフィラキシーショック
外来の異物に対して免疫が過剰に反応してしまうことにより呈する急性症状

5)Fag e 2タンパク質
ソバアレルギーを引き起こす原因タンパク質として2番目に登録されたもので、アナフィラキシー症状の要因と推定されている

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