大学院 薬学研究科 先輩インタビュー

薬剤師資格をもつ薬学博士をめざす ― 先輩からのヒント ―

2012年度に薬学部6年制の博士課程としてスタートした新潟薬科大学大学院薬学研究科は、多くの博士号取得者(薬学)を輩出してきました。博士課程で研究する学生は、薬学部卒業生、留学生、現役の薬剤師、他研究科の修士課程修了生など多岐に渡っています。

タイから新潟薬科大学へ。海外留学生のベンヤーパーさん

ベンヤーパーさん

世界を変える科学者になることを目標に、母国タイから新潟薬科大学へ海外留学を決意。現在博士課程に在学中のベンヤーパー(2023年4月新潟薬科大学大学院薬学研究科博士課程入学)さんにお話を伺いました。

ご自身の出身地と本学の大学院に入学するきっかけを教えてください

母国タイにあるチェンマイ大学の学部生だった私は、海外留学を志していました。そんな中、チェンマイで開催された日本留学フェアで新潟薬科大学のスタッフと出会い、海外留学に一歩近づきました。その後、私はすぐに新潟薬科大学のことをもっと知りたいと思い、調べていくうちに、魅力的な大学であることがわかり、出願することを決意しました。新潟薬科大学に入学して、教職員の皆さんや仲間たちにとても親切にしてもらい、大変嬉しく思っています。そのすべての方々の温かいサポートに心から感謝しています。

どのような研究をされていますか?また,研究室生活について教えてください

現在、私の研究は抗ウイルス自然免疫認識を制御する複雑な分子メカニズム、特にRIG-I様受容体に焦点を当てて研究をしています。現在進行中のこの研究プロジェクトを通して、もちろん難しい事もありましたが、あらゆる側面から大きな学びを得られています。特に、人生における貴重な教訓を得られたと同時に、研究スキルを大幅に向上させることができ、大きな進歩が得られたと感じています。今後もさらなるスキルアップが必要であると感じているため、引き続き努力を積んでいきます。

新潟での生活はいかがですか?母国のコミュニティがあると聞きました

私にとって、新潟に住むということは新しい世界への旅に出るようなものです。私は今アパートに住んでいますが、住まいが大学にもショッピングモールにも近いこともあり、生活環境にはとても恵まれています。私の楽しみのひとつは、この美しい自然に恵まれた地域をサイクリングすることです。新鮮な空気を吸いながら自然の美しさに触れることで、安らぎを感じています。この2年間、私はさまざまな大学に在学しているタイ人の仲間と出会う機会に恵まれました。仲間に恵まれたことによって、社会的視野が広がり、また、私にとって素晴らしい経験となっています。私は一人ではないのだと気づかせてくれた仲間に感謝しています。

博士取得後の将来のビジョンについて教えてください

ベンヤーパーさん

卒業後は、また新たな旅に出ようと思っています。海外で博士研究員としてさらなる研究キャリアを積みたいと考えています。そして、将来的には、母国タイに戻るつもりです。海外で得た豊富な経験と知識は、母国のためになると確信しています。

最後に,新潟薬科大学に興味のある方へメッセージをお願いします

この大学での経験は、あなたの将来のキャリアを充実させ、想像以上に貴重な経験を得ることができます。今自分の中で思い浮かべている「なりたい自分」になれるよう応援しています。新潟薬科大学への留学を考えている人はDo It!!

博士課程に在学していた中澤太陽さん

中澤太陽さん

薬剤師資格を取得した後に、博士課程に入学することの意義はどこにあるのでしょうか?本学大学院博士課程を修了した中澤太陽(2019年3月新潟薬科大学薬学部卒業、大学院薬学研究科博士課程入学、薬剤師)さんに在学中にお話を伺いました。

どのような研究をしていますか?

薬品製造学研究室に所属し、高温環境に曝されたインスリンアナログの立体構造変化を解き明かす研究を行っています。インスリン製剤などのペプチド製剤とよばれるものは、保管温度に注意が必要な製剤ですが、薬剤交付後は患者さん自身が管理する必要があるため、適切な保管温度で保管できていない可能性があります。しかしながら、高温環境に曝されたインスリンアナログの立体構造変化を解析した報告はほとんどありません。そのため博士課程では、その問題を解決するために日々研究に励んでいます。

博士としての将来像を教えてください

研究を通して、将来、様々な場面で遭遇するであろう問題に対して、解決につながる筋道を論理的に思考し、実際に役立たせることができる専門家として活躍したいと思っています。私と出会った多くの人がその後の人生でプラスになるような影響を与えられる人になりたいです。

生活面などのアドバイスをお願いします

学費や生活費については、学内の奨学金やアルバイトで賄うことができます。例えば、給付型奨学金である新潟薬科大学大学院薬学研究科夢きぼう奨学金、新潟薬科大学大学院奨学金を受給している他に調剤薬局でアルバイトを月2回行っています。調剤薬局でのアルバイトについては、実際に現場でどのような問題があるかを知る機会にもなり、大変有意義です。

様々局面を解決できる論理的思考能力を研究を通じて身につける、ということが中澤さんの博士課程に進学した意義とのことでした。また、同時に薬剤師としての経験も継続的に続けられているとのことでした。

病院薬剤部に勤務しながら、学位を取得した竹野孝慶先生

竹野孝慶さん

社会人入学者も近年増加しています。薬剤師として病院に勤務しながら博士課程を修了し、現在は新潟薬科大学の助教である竹野孝慶先生(2014年3月新潟薬科大学薬学部卒業、2020年3月新潟薬科大学大学院薬学研究科博士課程修了)に当時のお話を伺いました。

病院薬剤師として勤務されていた当時の業務内容を簡単に教えてください。

基本的な調剤の業務、注射業務、薬剤管理指導業務など、病院薬剤師としての業務を全般的に担当していました。なかでも特に力を入れていたのが病棟での薬剤師業務です。当時勤務していた病院では、各病棟に専任の病棟薬剤師を配置しており、私は主に消化器内科、糖尿病・内分泌内科、外科の患者さんが多く入院する病棟を担当していました。そこで、入院患者さんへの薬剤指導や薬剤管理を行っていました。

大学院博士課程でどのような研究をしていましたか?

乳がんに関する研究を行なっていました。乳がんの転移やそれに関係するタンパク質や遺伝子の解析、新規ターゲットの探索を行いました。

現在はどのような授業をご担当されていますか。

現在は、「患者応対と服薬指導」「薬物治療に役立つ情報」などの4年次以降の科目を担当して います。また、病院薬剤師として勤務していた際に緩和薬物療法に関連した資格を取得したこともあり、「緩和医療における薬物治療」といった授業も担当しています。

病院薬剤師として勤務しながら、博士課程に入学されましたが、大学で研究を続けようと考えた理由を教えてください。

私は学部生の頃、「臨床薬学研究室」に所属しており、いわゆる基礎研究に取り組む機会はありませんでした。そのため、基礎研究は一体どのようなことを行うのか興味があったことも、大学院への進学を選択した理由の1つです。また、「がん」に関連する研究を通じて、臨床現場に何らかの形で貢献できるのではないかと考え、研究を続けていました。

働きながら研究をしていくうえでの苦労や工夫されていたことはありましたか。

実験の内容によっては、長時間にわたるものや事前準備に時間を要するものがありました。そ うした場合には、自分一人の力だけでは対応が難しいこともあり、担当の先生や先輩にご協力いただくことで、何とか乗り越えることができました。また、手技や手順についてもいざ一人で行う際は、本当に正しくできているのか不安になることがありました。そのため、できるだけ先生や先輩の手技やアドバイスをこまめに実験ノートに記載するようにしていました。

これから社会人として学位取得を目指す方に、仕事と研究を両立するためのアドバイスなどありましたらお願いします。

体力や時間的な余裕があるうちに、思い切って学位の取得を目指すことも選択の1つだと思います。また、社会人として学位取得を目指す場合には、特に時間の管理は重要ではないかと思います。仕事が終わった後にどれだけ時間を確保できるのか、どの程度大学に来て実験などが行えるのかといった点を、あらかじめ明確にしておくことが大切であると思います。そうすることで、指導を担当してくださる先生とも予定がたてやすくなります。

薬剤師として働く際、どのような場合に学位が必要となるでしょうか?学部学生にアドバイスをお願いします。

例えば、博士課程で執筆した論文が、薬剤師として各種の専門資格を取得する際の要件として 活用できる場合があります。そのため、博士課程で身につける高度な研究能力は、専門薬剤師の資格取得を目指すうえでも役立つと思います。また、大学などで教育や研究に携わる場合には、学位が必要とされることも多いため、将来的に大学教員を目指したいと考えている方は、早いうちに情報を集めておくことをおすすめします。