新潟薬科大学

応用生命科学部 研究室紹介

食品分析学研究室

メタボリック症候群の発症予防を目指した機能性食品成分の探索と機能評価

食品分析学研究室では、肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常症などのメタボリック症候群の発症予防効果のある機能性食材や機能性成分の探索と機能評価を行っているほか、食品成分と医薬品の相互作用についての研究も行っています。


研究概要

グライセミックインデックス(GI)とは、ブドウ糖50 gを摂取した後の血糖値時間曲線下面積の値(AUC)を100として、糖質50 gを含む食品を摂取した後のAUCより算出されます。血糖値上昇が緩やかな低GI食品は、糖尿病性神経障害・網膜症・腎症などの合併症の発症予防に効果的であるが、高GI食品は、肥満症などの有病率と重症度を増加させることが報告されています。しかし、食品のGIは固有な値ではなく、種々の要因によって大きく変動します。特にご飯のGIは、米穀の種類・調理方法・加工方法の違いによって、7~132と非常に大きくGIが変動するにも拘らず、高GI食品に分類されているのが現状であります。本研究は、食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分の摂取によるご飯のGIの変動について詳細な検討を行い、ご飯のGIが各食品成分の摂取によって低下することを示し、ご飯のGIが固有の値ではなく、食品成分の摂取によって低GI化が可能であることを実証するために行います。
米飯の低GI化は、「セカンドミール効果」を利用しても達成可能であると考えられます。「セカンドミール効果」とは、1回目の食事の内容が、2回目の食事の後の血糖値の上昇に影響を及ぼす効果であます。図1に米飯のセカンドミール効果の例を示しました。朝食に0、25、50、75 gのグルコースを健常成人に摂取してもらい、3時間後に昼食としてパック米飯1パック(糖質量65.8 g)を摂取してもらいました。その結果、昼食摂取後の血糖値は、同じパック米飯を同量摂取しているにも関わらず、朝食にグルコースを75 g摂取した場合(青●)に、血糖値が有意に低く推移することが明らかとなりました。前の食事の内容が次の食後の血糖値の変動に影響を及ぼすセカンドミール効果は、図2に示すランドルサイクルの考え方でうまく説明することができます。ランドルは、血液中のグルコースと遊離脂肪酸が密接に関連している回路(glucose-fatty acid cycle)が存在していることを提唱しました。血液中の遊離脂肪酸は組織内に運ばれ、ミトコンドリア内でβ‐酸化をうけてアセチル‐CoAになります。このアセチル-CoAはピルビン酸に作用する酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)やフルクトース‐6‐リン酸に作用するホスホフルクトキナーゼ(PFK)を阻害します。その結果、組織中のグルコース‐6‐リン酸が蓄積し、グルコースに作用する酵素であるヘキソキナーゼ(HK)が阻害されることによって血液中に存在するグルコースの取り込みが抑制され、インスリン抵抗性が惹起されるという仮説であります。図1に示しましたように、朝食にグルコースを75 g摂取した場合(青〇)、血漿中の遊離脂肪酸濃度はインスリンのホルモン感受性リパーゼ(HSL)の抑制作用によって、摂取後3時間においても他の投与量群に比べて低く推移しています。これは、血液中のグルコースが組織中に取り込まれ易い状態であることを示しています。実際、朝食にグルコースを75 g摂取させた場合、昼食後の血糖値の変動が他の摂取量群に比べ低く推移するセカンドミール効果が観察されました。このように、米飯のGIは固有の値ではなく、食物繊維・タンパク質・脂質など食品成分の摂取やセカンドミール効果によって低GI化が可能であると考えられます。

図1.セカンドミール効果

図2.ランドルサイクル

佐藤 眞治(サトウ シンジ)
教授
学位:薬学博士

肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常症などのメタボリック症候群の発症予防効果のある生活習慣と食習慣を提案していきたいと考えています。


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